新潟地方裁判所 昭和24年(行)24号 判決
原告 曾我一英 外一名
被告 新潟県教育委員会
一、主 文
原告等の請求を棄却する。
訴訟費用は原告等の負担とする。
二、請求の趣旨
原告等訴訟代理人は、被告が昭和二十五年五月十一日附を以て爲した原告等の轉任並びに休職処分の審査請求を却下する旨の決定を取消す。訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求めた。
三、事 実
(一)原告等はいづれももと新潟市関屋中学校の教諭であつたが、被告は昭和二十四年十一月三十日附を以て原告曾我に対し新潟縣西蒲原郡坂井輪中学校に原告藤田に対し新潟市宮浦中学校にそれぞれ轉任を命じ同時に両名を休職処分に付し、右休職処分の処分説明書を原告曾我に同年十二月七日原告藤田に同月六日交付した。そこで原告等は教育公務員特例法第十五條第三項国家公務員法第九十條第九十一條に基き、同月十三日附書面を以て被告に対し右轉任並びに休職処分について口頭審理を行つて審査すべきことを請求し右書面は同月十九日被告に送達され、被告に於て右請求を受理し同月二十二日附書面でその旨原告等に通知された。その後被告は原告等に対し昭和二十五年四月六日頃到達の同月四日附書面を以て同月二十日までに同年三月二十四日公布即日施行の同年新潟縣教育委員会規則第七号教育公務員の意に反する不利益な処分及び懲戒処分に関する審査の規則に從ひ審査請求書を補正するよう命じ原告等がこれに應じなかつたところ、口頭審理を行ふことなく、同年五月十一日附を以て同規則第三條第三項により原告等の審査の請求を却下する旨の決定を爲し、右決定は同月十二日原告等に告知された。(二)しかしながら原告等は教育公務員特例法第十五條第三項によつて準用される国家公務員法の規定に從つて審査の請求を爲したのであつて当時その方式に欠けるところなく且つ被告に於ても右請求を受理したのであるから、被告は直ちに事案の調査を爲すべきであるのに拘らずこれを爲さず、その後に制定施行された前記新潟縣教育委員会規則により審査請求書の補正を命じその補正命令に應じなかつたことを理由として審査の請求を却下する旨の決定を爲し又原告等が口頭審理を行ふことを請求したのに拘らずこれを行はないで右決定を爲したのであつて、これらの点に於て右決定は違法であるからその取消を求めると述べた。(立証省略)
被告指定代理人は、主文と同趣旨の判決を求め、答弁として、原告主張の(一)の事実のうち、被告が原告等の審査の請求を受理したとの点は否認するが(一)のそのほかの事実は認める。被告は原告等から審査請求書の提出を受けた当時その審査手続を規定すべき教育委員会規則が未だ制定されていなかつたため審査についての手続をとることができなかつたので單に審査請求書を受付けるに止めておいたのである、しかしてその後教育委員会法第五十三條に基き昭和二十五年新潟縣教育委員会規則第七号が制定施行されたので同規則第三條第二項により原告等に対し右審査請求書には処分に対する不服の理由が明示されていないから同規則に從ひこれを補正するよう命じたのであるが原告等に於てこれに應じなかつたので同條第三項により原告等の右審査の請求を却下したのである。又本件審査請求却下の決定は処分の内容につき審査したものではなく唯前記の如く審査請求書の形式的な要件に不備の点があつたため補正を命じたに拘らず之に應じなかつたこととを理由として爲したものであるから口頭審理を行はなかつたのであつて何等違法の点はないと述べた。(立証省略)
四、理 由
原告主張の(一)の事実は被告に於て原告等の審査の請求を受理したとの点を除き当事者間に爭ひがない。
しかして昭和二十五年新潟縣教育委員会規則第七号教育公務員の意に反する不利益な処分及び懲戒処分に関する審査の規則は教育委員会法第五十三條に基き昭和二十五年三月二十四日公布即日施行されたのであるが国家公務員法第九十二條第三項昭和二十四年八月二十日施行の人事院規則(一三―一)を参照すればかかる教育公務員の意に反する不利益な処分及び懲戒処分に関する審査についても当然その手続規定の制定が予定されていたものと解されるので右規則施行前に於ては被告委員会に於て被処分者から審査の請求を受けても審査の手続を進めることができなかつたものといえる。從つて被告が原告等に対し審査請求書を受理した旨通知したとしても、その受理といふのは審査請求書の形式的な要件に何等不備のないものとしてその請求を受理したといふ意味ではなく、單に審査請求書の提出を受けこれを受領した意味に過ぎないものと考へるのが相当であつて、成立に爭ひない甲第一、二号証の一、二により認められる如く被告が原告等に対し右の通知と同時に審査の日その他事前取るべき必要な手続等は追つて文書を以て通知する旨断つていることからもその趣旨を窺ひ知ることができるのである。しかして前記新潟縣教育委員会規則はその施行期日以後に行はれる審査の手続に適用されるべきものであるから、その施行前に爲された審査の請求に対しても、同日以後に行はれる手続についてはやはりその適用があるものといはねばならない。從つて被告委員会に於ては右規則施行前に提出された審査請求書についても右規則に照らして形式的な要件に不備があると認めるときは、同規則第三條に基き、その施行後の手続として審査請求者にその補正を命じ之に應じないときは審査の請求を却下することができるものと解すべきであつて原告等は被告委員会より右規則施行後の手続として前記の如く審査請求書の補正を命ぜられたに拘らずこれに應じなかつたのであるから、被告委員会に於て原告等が右補正命令に應じなかつたことを理由としてその審査の請求を却下したことは違法とはいへない。又教育公務員特例法第十五條第三項によつて準用される国家公務員法第九十一條第二項は処分を受けた職員から請求があつたときは口頭審理を行はなければならないと規定しているけれども、右規定は請求の内容に付て実質的に審理する場合に適用されるのであつて、本件のように請求の内容に立入つて審理することなく單に審査請求書の形式的な要件の不備について補正を命じたに拘らず之に應じなかつたことを理由として審査の請求を却下する場合には適用がないものと解すべきである。從つてこの点に関する原告等の主張も採用し難い。
よつて原告等の本訴請求は理由がないからこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九條第九十三條第一項本文を適用して主文の通り判決する。
(裁判官 山村仁 中村憲一郎 小林信次)